ある年の4月③

 このねぐらの食い物は美味い。

 

 

 「きゃっとふうど」というものらしい。

 

 

 このねぐらで暮らす前は、そのへんにいるものを捕まえて食べていた。「ニンゲン」どもにも分けてやろ、持っていったら大騒ぎになった。

 

「ネズミドツカモツテイツテ」と言っていた。

 

 どうも吾輩の食う物と「ニンゲン」どもの食う物は違うようだ。

 

 

 

 

 あとは「ニンゲン」どもの食い残しをあさっておった。屈辱的だったが生きるためにはそれしかなかったのだ。今ではねぐらにいる「ニンゲン」どもに食い物を用意させている。楽になったものだ。

 

 

 

 「ニンゲン」どもが狩りをしているところは見たことが無い。詳しいことは解らんが、「すうぱあまあけっと」という所や「どらつくすとあ」で狩りをしてくるらしい。「トクバイビ」だとか「せえる」だとか訳のわからん事を薄っぺらいものを眺めながら話している。

 

 

 吾輩の物も狩ってくるのだが、それは「ぺつとしよっぷ」や「ぺつとこおなあ」で獲物がたくさんあるのだそうだ。

 

 不思議なのは狩った獲物がいつもぐちゃぐちゃになっているのだ。最初は気味が悪かったが、食ってみると意外に美味いのだ。

 

 

 

このねぐらの外で暮らしていたときは、生きるために仕方なく食っていたが、今では舌も慣れてきた。

 

「きゃつとふうど」でなければ満足できない。「ニンゲン」どもの食い残しをあさっていたのが今となっては懐かしい。