ある年から2回目の2月―人間からーVol①

 「ネコ」が死んだ。

 

 

 名前らしい名前も付けず、ただ「ネコ」と呼んでいた。だが、確実に15年は家の周りをうろついていた。今まで、多くの野良猫が来ては消えていった。ここまで長く家の周りをうろついていたのはこの「ネコ」が初めてだった。

 

 不愛想という言葉がこれほど似合うものはない。「にゃー」という猫らしい鳴き声を一度も聞かないままであった。

 だが、どこか惹きつけるものがあったのは事実。去年の冬に風邪をこじらせて弱りはじめ、更に大雪が積もった。寒さで震える「ネコ」を家の中に入れてやった。

 

 思いのほか嫌がらず家の中で過ごした。何か不満があるとうなり声のような声を上げる。YouTubeやテレビに出てくる猫とは大違いの、可愛いとは対極にある姿だった。

 

 十五年もいた猫であるから、死んでしまって寂しさは多少あった。だが、それ以上に命の終わりを見届けたこと、周りの人間として最期を看取るという務めを果たせたという安堵感があった。