2023-01-01から1年間の記事一覧

ある年から2回目の2月 ―人間からー Vol④

盛大なものではなかったが、15年近くも家の周りをうろついていたネコを見送った。 家に入れたときから、年老いたネコであったので先は長くないだろうと思っていたが、あまりにも急だった。 ネコは弱った姿を見せないのだという。人間の近くにいても野生の…

ある年から2回目の2月 ―人間からー Vol③

ささやかながらも「ネコ」の葬式を終えた。 15年ほどそばにいたものを見送る。周りにいた人間としての務めを果たせたのではないか。最小限ではあるが。 冷たく硬くなった「ネコ」を火葬する為の箱に入れた。あれだけ抱くことなどもってのほかだった「ネコ…

ある年から2回目の2月 ―人間からー Vol②

死んでしまった「ネコ」をそのままにはしておけない。とりあえず、ペット葬儀社に電話を掛けた。すぐにではなかったが、その日のうちに来てくれた。家族全員が時間を作れることのできる珍しい日であった。 葬式に当たって色々と聞き取りがあった。野良猫であ…

ある年から2回目の2月―人間からーVol①

「ネコ」が死んだ。 名前らしい名前も付けず、ただ「ネコ」と呼んでいた。だが、確実に15年は家の周りをうろついていた。今まで、多くの野良猫が来ては消えていった。ここまで長く家の周りをうろついていたのはこの「ネコ」が初めてだった。 不愛想という…

ある年から2回目の2月 ―「若者」からー

あの方が死んだ。 話しかけても、めんどくさそうに顔を上げてくれないんだ。 そこにあるのは、あの方の形をしたもの。もう動かない。 僕にはわかっていたんだ。あの方がもう長くは無いという事を。多分、あの方も解っていたと思う。だから、少しでもそばにい…

ある年から2回目の2月⑥

今日はとても暖かい。良い天気だ。「ハル」が来たようだな。吾輩は「きゃつとたわぁ」の上でひとしきり眠った。最高の寝心地だ。ずっとこんな日が続けば良い。 ぅう。何が起こったか解らん。さっきまで「きゃつとたわぁ」の上にいたはずなのに、今は下で横に…

ある年から2回目の2月⑤

吾輩が「ニンゲン」どもから離れて過ごしていると、「ニイチャン」に捕まった。そして「ニンゲン」どもの部屋に連れていかれた。 寒いところにいるなと言う。そして「コタツ」に入れてくれた。やはり「コタツ」は良い物だな。身体を芯から暖めて「ひぃたぁ」…

ある年から2回目の2月④

吾輩が気楽に寝そべっていると、いつぞやの若いのがいた。 「何の用だ」 「えぇ・・・その・・・」 「なんだ」 「子供の時のお礼を言い足りていないと思って」 またか。この若いのは以前吾輩が助けたことがあるらしい。覚えてはいないが。「からす」や「へび…

ある年から2回目の2月③

あれだけ「コタツ」が好きだったのに、そこに行きたくなくなった。 「ニンゲン」どもと過ごしたくもなくなった。 「コタツ」も「ニンゲン」どもも嫌いになったわけでは無い。「ニンゲン」どもは何も気にしたこともない。いてもいなくても変わらない。 だが、…

ある年から2回目の2月②

どうも調子が良くない。こんな日が続いている。長く生きてきたが、このようなことはなかった。 今日は腹が痛い。寝れば治ると思っていたが、治らない。さらに痛くなってきている気がする。 やはり。年なのか。まだ「ニンゲン」どものねぐらで過ごせているか…

ある年から2回目の2月②

どうも調子が良くない。こんな日が続いている。長く生きてきたが、このようなことはなかった。 今日は腹が痛い。寝れば治ると思っていたが、治らない。さらに痛くなってきている気がする。 やはり。年なのか。まだ「ニンゲン」どものねぐらで過ごせているか…

ある年から2回目の2月①

少し調子が悪い。やはり年なのか・・・ この「ユキ」の中を動き回る若い奴らを見ていると、うらやましくもある。ただ、食う事には問題が無い。食えなくなれば吾輩は終わりだろう。 しばらくは、寒い日が続く。だが、「ニンゲン」どものねぐらにいることで、…

ある年から2回目の1月④

ここ最近、動きが悪くなっている気がする。「ネズミノオモチャ」も面白いとは思えなくなった。 とにかくだるい。そして、寒い。もともと何もしたくないが、なおさら動きたくない。 安心して眠ることのできるこのねぐらは吾輩にとっては天国だ。そして、食う…

ある年から2回目の1月③

外は「ユキ」が降っている。 あの時ほどではないが、相当な量だ。あれから「イチネン」か。あの時は死ぬかと思った。とてつもない量の「ユキ」。なんとかこのねぐらに潜り込むことができて、生き延びることができた。 このねぐらは退屈だ。だが、若くはない…

ある年から2回目の1月②

「カァチャン」が吾輩にこんなことを言ってきた。 「イチネンタツタネ」 何のことかわからない。なんだ?その「イチネン」とやらは。 「ニンゲン」どもは、無駄なことを考える。ただ吾輩は「ニンゲン」どもより賢いので解る。寒くなって暑くなって、また寒く…

ある年から2回目の1月①

「ニンゲン」どもの世界では今「オショウガツ」なのだそうだ。 よくわからん。「ニンゲン」どもはよくわからん事を、真剣にやる。「ハツモウデ」やら「カキゾメ」やら「オトシダマ」やら、本当によくわからん。 また「マゴ」がきた。だが「ころな」がひどい…

ある年の12月の裏側

この時期の一番のトピックはコタツという物の存在を初めて知ったことですね。 前の年の冬は保護したばかりで人間のいる所にはあまりいませんでした。寒い外から逃れることができたから、それだけで満足だったのでしょう。 あまりにも気に入ってしまって、入…

ある年の12月④

寒くなって、「コタツ」で寝ていると何やら騒がしい。 「トオチャン」も「カァチャン」も「ニイチャン」も騒いでいる。「オオソウジ」しろしないだの、やり方がどうだの、とにかくやかましくて眠れもしない。 そのうち、「モチ」やら「オセチノジュンビ」だ…

ある年の12月③

「カァチャン」が「トオチャン」を使って何かしておる。なにやら大きなものだ。しばらくすると「カァチャン」も「トオチャン」もその中に足だけ入れている。 吾輩がじっと見ていると、「カァチャン」が教えてくれた。「コレはコタツだ」と。 なんだ?その「…

ある年の12月②

このねぐらからは「ヤマ」がよく見える。 何か上の方にかかっている。「カァチャン」が言うには、あれが「ユキ」なんだそうだ。 少しずつ、「ユキ」が下の方に進み、吾輩がいるこのねぐらまでやってくる。 去年を思い出す。 とてつもない「ユキ」があったこ…

ある年の12月①

なにやら外が騒がしい。 外を見ると「ニンゲン」どもが「クルマ」に何やらしている。「クルマノたいやコウカン」をしている。吾輩にはわかる。「ニンゲン」どもがこれをすると、しばらくすると「ユキ」が降る。まったく「ニンゲン」どもは余計なことをする。…

ある年の11月の裏側

これまで、いろいろなおもちゃを買っても知らんぷりで、さすがに高齢猫は何も興味示さないかと思っていたのですが、以前ネズミに飛びかかって捕まえたのを思い出し、ねずみのおもちゃを買い与えました。 すると、見た瞬間飛びかかってねずみ(おもちゃ)を捕…

ある年の11月④

「ニイチャン」が何か狩ってきたらしい。 吾輩にくれるという。しかし、「ニイチャン」が狩ってくるものは、下らないものが多い。否、下らないものしかない。 これを狩ってきたのか・・・・・。 うむ・・・・ 気に入った。 「ニイチャン」にしては、なかなか…

ある年の11月③

「奴」が死んで、どれくらい経っただろうか。そんなにも経っていない気がするのだが。とてつもなく前の事にも感じる。 向こうには若い奴ら(子猫)が走り回っている。懐かしいものだ。吾輩もあれくらいのときは色々と走り回って危ない目に遭って、よく叱られ…

ある年の11月②

朝から穏やかな天気で、日差しも柔らかく昼寝日和であったが、不気味な音で飛び起きた。あやうく「きゃつとたわぁ」から落ちる所であった。 「ニイチャン」が「とらんぺつと」とやらを鳴らしている。これが不快なことこの上ない。なにが「ゲイジュツノアキ」…