ある年から2回目の2月④
吾輩が気楽に寝そべっていると、いつぞやの若いのがいた。
「何の用だ」
「えぇ・・・その・・・」
「なんだ」
「子供の時のお礼を言い足りていないと思って」
またか。この若いのは以前吾輩が助けたことがあるらしい。覚えてはいないが。「からす」や「へび」をぶちのめして、助けたことがあるのだそうだ。
「礼など要らん。吾輩はすべき事をしたまでだ。だが、なぜ今になってここに来た。」
「よくわからないのですが、今逃すと、もうその機会は無いと思って・・・」
「どういうことだ」
「それが・・・よくわからないんです」
「ともあれ、礼など要らん。あの時の事は覚えてもおらんが、礼を欲しくてやったのではない。
「そうですか。僕はいつかあなたのようになりたいと思います」
「それはお前の自由だ。そうなりたいと思えば思うがいい」
「ありがとうございます。しばらくここにいて良いですか。邪魔しませんから」
「勝手にしろ」
その後吾輩がひと眠りして目が覚めた時には、若いのはいなくなっていた。