ある年の10月③
ある日、「キンジョノヒト」が来た。
吾輩を知っているようだ。吾輩の事を探していただとか言っていたが、吾輩はお前のことなど探してはおらん。
吾輩がこのねぐらにいるのは、それなりに食い物にありつくことができたからであって、多少はこのねぐらの「カァチャン」たちに恩義はある。お前には何の恩もない。
「ニンゲン」どもは勝手なものだ。いなくなった途端にありがたがる。この前も「わいどしょぅ」を見ていたが、誰々が死んだとなると大騒ぎになるが、生きている間にお前らは何をしていたのか。死にそうになっている時に何かしたのか?
何もしとらんのだ。本当に勝手なものだ。死んだときにギャーギャー騒ぐ奴は生きている時に何もしない。そんなものだ。
「キンジョノヒト」には、それと同じものを感じるのだ。遠間から見ている傍観者。「おりんぴっく」やら「ヤキュー」やら「さっかァ」やらを眺めて騒いでいる奴と同じなのだ。自分は眺めているだけで何もしない。そして文句を言うだけ。気楽なものだな。
何もしないニンゲンどもよ、自分で何かやってみたらどうだ。
眠くなったからひと眠りするか。