2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ある年の5月の裏側

猫が我が家に住み着いてから4か月。寒くて家に入ってきたのですが、暖かくなる外に出ていくのではないかと思っていました。 案の定、「外に出せ」と騒ぎ立てます。仕方なく扉を開けて外に出します。一目散に外に飛び出し、その姿を眺めて家から巣立っていく…

ある年の6月④

奴が立ち去ってから我が輩は考えた。 我が輩と同じような形をしたものがいくつか死んだ。あの「フユ」の厳しさで。 我が輩はこれで良かったのだろうか。 若いころから吾輩は「ニンゲン」どもと暮らす奴らを心の底から軽蔑していた。それが今ではどうだ。我が…

ある年の6月③

「死んだのかと思っていたぜ。お前生きていたのか。」 ねぐらで寝ていると、聞き覚えのある声で起こされた。 見ると、奴が吾輩を見下ろしていた。奴とは若いころから縄張り争いで数多く戦ってきた。お互いに年を取り、丸くなったからか縄張り争いはくだらな…

ある年の6月②

「アメ」が降っている。 吾が輩はこの「アメ」が苦手である。あのまとわりつく感触が気に食わないのだ。 このねぐらで暮らす前は食い物を探さなくてはならないから、「アメ」であっても出歩いてたのだ。 今では「アメ」があったとしても気にはならない。この…

ある年の6月①

吾輩のねぐらなこの時期になると蒸し暑くなる。「アメ」がないからだ。 濡れるのは嫌なのだが、のどが渇く。さほど好きでもない「透明でたいした特徴のないもの」を飲まないといけない。吾輩は特段飲まないが、「ニンゲン」どもは大量に飲んでいる。そんなに…

ある年の5月③

ねぐらの中にばかりいるから、さすがにつまらなくなってきた。ギャーギャー騒いで吾輩は外に出ることができたが、久しぶりの外の空気は良かったかというとそうでもなかった。 なつかしさはあったが、これまで過ごした場所にも愛着は無くなっていた。若いころ…

ある年の5月②

「ニンゲン」界では「ごぉるでんういいく」というものがあるらしい。 その時の「ニンゲン」はのんびりできるそうだが、要はいつもの吾輩と同じという事か。 「ニンゲン」どもの多くは夜少し寝て、朝になるとだるそうな顔、青白い顔、疲れ切った顔でどこかに…

ある年の5月①

吾輩には嫌でたまらないものがある。 それは「カラダフキフキ」である。「といれ」が終わるとそれが待っている。なにやらひんやりした物を吾輩の身体に押し付けてくるのだ。 ひんやりした物が身体に当たると何とも言えない不快感があるのだ。 「キレイキレイ…

ある年の4月④

気が付いたら暗くなっていた。 あまりに気持ち良かったので眠ってしまった。 「ひとおだめにするそふぁー」という物は、なかなか良かったぞ。 しかし、これだけ眠れたのはいつ以来か。いや、初めてではないだろうか。吾輩は戦いに明け暮れていた。いつ何時何…

ある年の4月③

このねぐらの食い物は美味い。 「きゃっとふうど」というものらしい。 このねぐらで暮らす前は、そのへんにいるものを捕まえて食べていた。「ニンゲン」どもにも分けてやろ、持っていったら大騒ぎになった。 「ネズミドツカモツテイツテ」と言っていた。 ど…

ある年の4月②

「おい、なんだそんなもの首に付けて」 「これ?ご主人様がつけてくれたんだよ。とっても気に入ってるの。カゾクノイチインのしるしなんだって。」 「ご主人様?ニンゲンだろ。あんなものはクズだ」 「そんなひどいこと言わないで。わたしはご主人様大好きだ…