2022-01-01から1年間の記事一覧

ある年の11月①

暑い日が続き、暑さが和らげば少しずつ涼しくなってくる。そして、寒くなっていく。長く生きていれば、それくらい解るようになる。 この時期は過ごしやすい。暑くもなく寒くもない。「ニンゲン」どもは、この時期を「シヨクヨクノアキ」という。何でも食い物…

あるとしの10月の裏側

我が家に「猫」がやってきて10か月。 いることが当たり前の風景になっていましたが、気が付いたことが・・・ それは、猫に振り回されていること。犬は飼いならされますが、猫はそうはいきません。 勝手気まま。むしろ、猫に人間が支配されているんではない…

ある年の10月④

「カァチャン」が「キンジョノヒト」に吾輩の面倒を見ていると言っていた。 何か勘違いしていないか。このねぐらの「ニンゲン」どもの面倒を見ているのは吾輩だぞ。 考えてみろ。以前、吾輩がこのねぐらで隠れたときに、「トオチャン」や「カァチャン」、「…

ある年の10月③

ある日、「キンジョノヒト」が来た。 吾輩を知っているようだ。吾輩の事を探していただとか言っていたが、吾輩はお前のことなど探してはおらん。 吾輩がこのねぐらにいるのは、それなりに食い物にありつくことができたからであって、多少はこのねぐらの「カ…

ある年の10月②

「オモチャ」という物を「ニイチャン」が狩ってきた。 これで遊べと言っている。 しかし、吾輩は何の興味もなかった。何が面白いのかが全くわからん。吾輩はこのねぐらで、それなりに眠れてそれなりに食えれば良いのだ。 遊べ遊べと「ニイチャン」がしつこい…

ある年の10月①

不思議なものだ。 あれほど暑かったのに、涼しくなっている。そして、寒くなり、また暑くなる。 一体だれが決めているんだろうか。吾輩にも決めさせてほしいのだが。 この年になると、何もないことに有難みを感じる。いわゆる「ダンシャリ」とでもいうものだ…

ある年の9月の裏側

この月に関しては、空想がかなり入っています。 我が家の猫を訪ねてきていた猫を見かけなくなりました。どこか良い縄張りを見つけたのかもしれませんが、「猫が死んでいた」という話も近所で話していたのを聞いたこともあり、このような話を作りました。 猫…

ある年の9月④

吾輩は目が覚めた。 やはり、吾輩は生きている。奴は眠りづづけたままであったが吾輩は目覚める。 奴が見ることができない今を吾輩は眺めている。何も変わらない。「ニンゲン」どもや他の奴ら、生えている木や草。いつもの風景だ。だが、「いつも」は少しず…

ある年の9月③

「ニンゲン」どもには解らないだろうが、吾輩たちは誰が死んだのかがすぐに解る。動物的勘というものだ。 奴が昨日の夜に死んだ。大往生とまでいかないが、苦しむことなく逝ったようだ。 思い出す。奴とは戦ってばかりであった。いや、戦いたくなるような何…

ある年の9月②

暑い日が続く。 だが、日差しを避ければ快適に過ごせる。吾輩は日陰で昼寝をしておった。 気配がしたので身が覚めた。奴がいる。 「いつ来てたのだ」 「しばらく前だ。以前のお前であればすぐに気づいたはずだ。」 「そうだな。このねぐらで暮らし始めて勘が…

ある年の9月①

まだまだ暑い。 だが、「マゴ」がいなくなったことで、吾輩はねぐらの中を歩きやすくなった。だが、「ニンゲン」どもの世界には「レンキユウ」というものがあるらしく、その時に「マゴ」が来るという。困ったものだ。 「ダイドコロ」に行ってみた。「ニンゲ…

ある年の8月の裏側

8月はやっぱり暑いですね。 「猫」もグダグダになって眠っていました。 仰向け、「へそ天」になって眠っている姿を見て 今まで、こんなに無防備に眠れることはなかったんだろうな。そう思えるほど、よく眠っていました。 ノラであれば敵多いでしょうし、お…

ある年の8月④

大変なことになった。 「マゴ」がしばらく、このねぐらに残るという。「オボンヤスミ」はせいぜい5回ほど大眠りすれば過ぎる。だが、「ナツヤスミ」なんだという。何のことだ「ナツヤスミ」とは。聞いたことが無い。 地獄のような日々が続くのか。「マゴ」…

ある年の8月③

「ニンゲン」どもの世界には「オボンヤスミ」というものがあるらしい。 「カァチャン」が「マゴ」が久しぶりに来ると言っている。「ころな」のせいでなかなか来れないから久しぶりだとも言っている。まさか、あの「マゴ」か。厄介なことになる。 いつぞやか…

ある年の8月②

ミンミンミンミンさわがしい。 「せみ」とかいう奴だ。若い時はよく食った。「ニンゲン」どもは、「せみ」を食う吾輩を見て気味悪がっていた。だが「ニンゲン」どもよ。お前らの知らない世界に住む別の「ニンゲン」どもは吾輩のように「せみ」を食らうのだぞ…

ある年の8月①

暑くなってきた。この暑いのが吾輩は大嫌いである。 だが、吾輩はとてつもない発見をしたのだ。「ニンゲン」どもの後を付いていくと、涼しいのだ。 よくわからんが、上から風が吹いている。その風が何とも言えぬ快感なのだ。 「えあこん」やら「センプウキ」…

ある年の7月の裏側

冬の厳しさから猫を保護して、気が付けば半年がたちました。 いつか出ていってしまうだろうと思いながらも過ごし続けています。ノラとはいえ、自宅周りをうろうろしていましたから、多少は我が家にも愛着があったのでしょう。 ただ、一度だけ外に出しました…

ある年の7月④

若い奴が去ってから吾輩は考えた。 吾輩も若かった時小さかった時は誰かに助けてもらっていた。「へび」やら「からす」やらから守ってくれていたのを思い出す。 あの若い奴はそれを覚えていたが、吾輩は忘れていた。だが、それが良いのだと思う。恩を着せた…

ある年の7月③

「ここにいたんですか」 強くなりつつある日差しを避けて眠っている我が輩に話しかけてきたやつがいる。 みると、見たことのない奴だ。若い。 「覚えていますか?去年の今頃、からすに襲われてるところを助けていただいた・・・」 思い出した。からすにやら…

ある年の7月②

我が輩がここにきてから「ハンドシガタッタ」とニンゲンどもが言ってきた。 ニィチャンがあの寒い日に捕まったことから、このねぐらでの生活が始まったのだ。快適ではないが、不快でもない。 若い時にねぐら暮らしであればイライラしただろうが、この年にな…

ある年の7月①

このねぐらの「ニンゲン」どもが「オモチャ」とやらを狩ってきたらしい。 これで遊べという。ふざけるな。何が楽しくてそんなものと遊ばねばならん。我が輩がここにいるのは、それなりに食えてそれなりに眠れるからだ。 ほんとうに冗談ではない。 我が輩を他…

ある年の6月の裏側

春先にはあれほど外に出たがっていたのに、ケガしたからか梅雨なのか解りませんが、外に出ようとしなくなりました。 雨が降っている外を眺めて、「濡れなくてよかった」という顔をしています。 このころから、野良猫たちが家の周りに寄り付くようになりまし…

ある年の5月の裏側

猫が我が家に住み着いてから4か月。寒くて家に入ってきたのですが、暖かくなる外に出ていくのではないかと思っていました。 案の定、「外に出せ」と騒ぎ立てます。仕方なく扉を開けて外に出します。一目散に外に飛び出し、その姿を眺めて家から巣立っていく…

ある年の6月④

奴が立ち去ってから我が輩は考えた。 我が輩と同じような形をしたものがいくつか死んだ。あの「フユ」の厳しさで。 我が輩はこれで良かったのだろうか。 若いころから吾輩は「ニンゲン」どもと暮らす奴らを心の底から軽蔑していた。それが今ではどうだ。我が…

ある年の6月③

「死んだのかと思っていたぜ。お前生きていたのか。」 ねぐらで寝ていると、聞き覚えのある声で起こされた。 見ると、奴が吾輩を見下ろしていた。奴とは若いころから縄張り争いで数多く戦ってきた。お互いに年を取り、丸くなったからか縄張り争いはくだらな…

ある年の6月②

「アメ」が降っている。 吾が輩はこの「アメ」が苦手である。あのまとわりつく感触が気に食わないのだ。 このねぐらで暮らす前は食い物を探さなくてはならないから、「アメ」であっても出歩いてたのだ。 今では「アメ」があったとしても気にはならない。この…

ある年の6月①

吾輩のねぐらなこの時期になると蒸し暑くなる。「アメ」がないからだ。 濡れるのは嫌なのだが、のどが渇く。さほど好きでもない「透明でたいした特徴のないもの」を飲まないといけない。吾輩は特段飲まないが、「ニンゲン」どもは大量に飲んでいる。そんなに…

ある年の5月③

ねぐらの中にばかりいるから、さすがにつまらなくなってきた。ギャーギャー騒いで吾輩は外に出ることができたが、久しぶりの外の空気は良かったかというとそうでもなかった。 なつかしさはあったが、これまで過ごした場所にも愛着は無くなっていた。若いころ…

ある年の5月②

「ニンゲン」界では「ごぉるでんういいく」というものがあるらしい。 その時の「ニンゲン」はのんびりできるそうだが、要はいつもの吾輩と同じという事か。 「ニンゲン」どもの多くは夜少し寝て、朝になるとだるそうな顔、青白い顔、疲れ切った顔でどこかに…

ある年の5月①

吾輩には嫌でたまらないものがある。 それは「カラダフキフキ」である。「といれ」が終わるとそれが待っている。なにやらひんやりした物を吾輩の身体に押し付けてくるのだ。 ひんやりした物が身体に当たると何とも言えない不快感があるのだ。 「キレイキレイ…