ある年の7月③
「ここにいたんですか」
強くなりつつある日差しを避けて眠っている我が輩に話しかけてきたやつがいる。
みると、見たことのない奴だ。若い。
「覚えていますか?去年の今頃、からすに襲われてるところを助けていただいた・・・」
思い出した。からすにやられそうになっていた小さいのだ。あのときはガキだったが、大きくなったのか。
「あの時、助けてくれなかったら僕はいま生きていません。なんとかお礼を言いたかったのですが、見つからなくて・・・・
噂でここにいるって聞いてきました」
「ふん。何も特別なことをしたわけじゃねえ。カラスが気に食わないだけだ。」
「だから、僕は生きています。そして、あなたは弱いものを攻撃しない。子供の時からそれは見ていましたから、知っています。小さい時、あなたに食べ物を分けてもらったという話もたくさん聞きました。
とにかく、お礼が言いたかった。それだけです。今はニンゲンと暮らしておられるのですね。あなたの縄張りは僕が必死で守ります。あなたがすぐに戻れるように守ってます。」
そう言い残して若いのは去っていった。弱いものをいじめて何になる。面白くもない。前に来たあいつと闘ったのはそれなりに面白かった。痛みもあったがな。
弱い者いじめをしないのは、良く思われたいからではない。いじめることがただ気分が悪いだけだ。それ以外に無い。