ある年から2回目の2月 ―人間からー Vol③

 ささやかながらも「ネコ」の葬式を終えた。

 

 

 15年ほどそばにいたものを見送る。周りにいた人間としての務めを果たせたのではないか。最小限ではあるが。

 

 

 冷たく硬くなった「ネコ」を火葬する為の箱に入れた。あれだけ抱くことなどもってのほかだった「ネコ」が嫌がりもしない。もう生きていないのだと思い知らされる。

 

 葬儀社の車が出発した。ゆっくりとゆっくりと。火葬場所に出るにはすぐ近くに幹線道路があるのだが、そこは通らず遠回りして車が家の前からずっと見えるような道を選んで走ってくれた。

 

 車が見えなくなるまで、色々なことを思い浮かべた。初めて家に来た時。あまりにも小さくてカラスに襲われたりしないかと心配したこと。セミや雀、ネズミを捕まえて自慢するかのように大きな鳴き声を上げていたこと。自分より小さな猫には優しかったこと。身体が徐々に弱って冬になると毎年風邪をひいていたこと。災害的な大雪で助からないと思って無理やり家に入れたこと。家の中で家主のようにふるまっていたこと・・・

 

 色々思い返した。新たな思い出が積み上げられることはない。薄れていくだけなのだ。