ある年の4月②
「おい、なんだそんなもの首に付けて」
「これ?ご主人様がつけてくれたんだよ。とっても気に入ってるの。カゾクノイチインのしるしなんだって。」
「ご主人様?ニンゲンだろ。あんなものはクズだ」
「そんなひどいこと言わないで。わたしはご主人様大好きだよ」
「勝手にしろ。」
「ねえ。ご主人様が家においでって言ってたよ」
「吾輩にか?」
「そう。この前も寒いのに外にいたでしょ?心配してるのよ」
「知らねーよ。吾輩には吾輩の生き方がある。」
「ご主人様と暮らしていけば、家の中で過ごせるのよ。ケンカもしなくても良い」
「決めたんだ。吾輩は誰にも頼らず生きていく」
「そう。ご主人様読んでるから行くね。」
ふん。ニンゲンども暮らしていて何になる。そんなものなど首に巻き付ける生活などまっぴらごめんだ――
どうやら眠っていたようだな。変な夢を見ていた。いや、昔の思い出だな。
夢の中に出てきたあいつは、若いころ何かと気にかけてくれていたな。そのゴシュジンサマとやらがカァチャンだったな。あいつもいつの間にか死んでしまったようだな。
最終的にはあいつの言う通りにしているということか。