ある年の8月④
大変なことになった。
「マゴ」がしばらく、このねぐらに残るという。「オボンヤスミ」はせいぜい5回ほど大眠りすれば過ぎる。だが、「ナツヤスミ」なんだという。何のことだ「ナツヤスミ」とは。聞いたことが無い。
地獄のような日々が続くのか。「マゴ」は吾輩の相手をしていると思っているが、勘違いするなよ。吾輩がお前の相手をしてやっているのだ。
解らんのか。吾輩の表情を。嫌がっておるのだぞ。子供の時から「ニンゲン」どもと過ごしてきたのならともかく、吾輩は長年「ノラ」であったのだ。こうしたことは苦痛以外の何物でもない。
どこか、暗がりを探さねばならんな。見つかりにくい所を。そして静かに過ごせるところを。
今となっては好き勝手に生きていたころが懐かしい。食うには困らんが、生きるには困ることばかりだ。「ニンゲン」どもと暮らしている奴らを馬鹿にしていたが、奴らなりの苦労はあったわけだな。
とはいえ、隠れる所は見つかった。あとは息をひそめて過ごすのみ。