ある年の11月①

 暑い日が続き、暑さが和らげば少しずつ涼しくなってくる。そして、寒くなっていく。長く生きていれば、それくらい解るようになる。

 

 この時期は過ごしやすい。暑くもなく寒くもない。「ニンゲン」どもは、この時期を「シヨクヨクノアキ」という。何でも食い物が美味いからそう言うらしい。確かにこの時期の「ねずみ」「すずめ」は美味かった。若い時はよく食った。「しゆん」の物なのだそうだ。

 

 今は、狩りをすることはない。「ニンゲン」どもが狩ってくれるのだ。吾輩も良い身分になったものだ。

 

 

 今日は「さんま」を食った。なにやら良いにおいがする。「ちよこれいと」やら「けえき」とやらは「ニンゲン」どもが食っていてもうらやましくもないが、「さんま」は食ってみたい。近くでじっと見ていたら、分けてやると言ってきた。

 

 違うだろう。まず吾輩が食してから「ニンゲン」どもが食うのだ。その辺が解っていないようだが、まあ良いとしてやろう。

 

 脂が強調されているが、病み付きになりそうな美味さだ。「きゃつとふうど」にも劣らない美味さだ。だが、毎日食うほどでも無いがな。