ある年の11月③
「奴」が死んで、どれくらい経っただろうか。そんなにも経っていない気がするのだが。とてつもなく前の事にも感じる。
向こうには若い奴ら(子猫)が走り回っている。懐かしいものだ。吾輩もあれくらいのときは色々と走り回って危ない目に遭って、よく叱られたものだった。
生きていろんなことがある。面白いこともつまらんこともな。何があろうと、とにかく生きてきた。
吾輩も年を取って、動くのもおっくうになることもある。「ニンゲン」どもと同じだな。「ニイチャン」はふうふう言いながら外を走っているが、「トオチャン」「カァチャン」は絶対にそんなことはしない。「マゴ」は「ニイチャン」以上によく走って、吾輩を追いかけてくる。
若いうちなのかもしれんな。走り回れるのは。
小僧(子猫)どもよ。今しかできないことをやっておけ。吾輩は今でこそ、走り回ることはできんが、若いうちにさんざん走り回ったから後悔はない。吾輩のように老いぼれたときに後悔せんようにするんだぞ。