ある年の1月②
外に出た瞬間、吾輩は立ち尽くしてしまった。
ねぐらの前は「ユキ」が溜まらないようになっているが、その先は前が見えないほどの「ユキ」だった。ただ「ニンゲン」たちの声は聞こえる。その声の方に向かえば良いのは解るのだが、足がはまってしまえば最後だ。できたばかりの「ユキ」は軟らかい。硬くなれば上を歩けるが、吾輩の身のこなしでも、埋もれてしまう。
「クルマ」の音がする。そのまま吾輩の前を通り過ぎたが、「ユキ」をかき分けてくれたお陰で通れる隙間ができた。吾輩は身体を縮め、大きく飛び越えた。「ニンゲン」たちのねぐらはもうすぐだ。なんとかたどり着けそうだ。
とんでもない「ユキ」をどうかき分けたか覚えていないが、何とかたどり着いた。疲れも限界だった。
―ねこが来たぞ―
吾輩を見つけた「ニンゲン」どもが集まってきた。心配してたぞと馴れ馴れしく触ってきやがったが、「ユキ」よりも温かいので許してやった。それより疲れた。腹も減った。何か食わせてくれ・・・
「たおる」とかいう物にくるまれながら、ようやく食い物にありつけた。ここの「ニンゲン」の食い物は美味い。力も沸いてくる。ゆっくり食べろと言われたが、吾輩には吾輩の食い方があるのだ。
思う存分食べ終えたころには、あたりは暗くなっていた。「ユキ」は増え続けている。また、ねぐらへ戻るのかと思うと気が滅入ってきた。
その場でじっとうずくまっていると、「ニンゲン」に抱え上げられた。そのまま奴らのねぐらに連れていかれた。
「ユキ」がひどいから、ここで過ごせと言っている。
お前ら「ニンゲン」は嫌いだが、寒いのはもっと嫌いだからな。仕方ないから、このねぐらで過ごしてやるとするか。