ある年の3月④
あったかくなってきた。
「ハルニナッタラ、イエカラデテイツテネ」と「カァチャン」が吾輩に言ってきた。それであれば仕方が無い。「ニンゲン」というものは勝手なものよ。
気分が悪くなったので、暗い部屋で過ごすことにした。あまり入ったことのない部屋だったが、吾輩がこれまで過ごしていたねぐらのような暗がりで、見つかりにくい。これまで気が付かなかったとはな。居心地が良いので、そのまま眠りに入ってしまった。
何やら騒がしい。「ニンゲン」どもが吾輩を探しているようだ。部屋の中だけでなく、外もすっかり暗くなっている。よく眠れたようだ。
ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーやかましい。「トォチャン」も「ニイチャン」も吾輩を探しているようだ。厄介なことだ。
隠れていたが、ついに見つかった。心配して探していたと「カァチャン」が言う。勝手なものだ。さっきまで、このねぐらから出ろと言っていたのだぞ。
吾輩の存在のありがたみが身に染みただろう。これからは吾輩に仕え続けるのだ。良いな。